現在、日本ホームナースセンターでは、医療的ケア児の通学、学校生活、学童でのサポートを行っております。
他の記事にて執筆の通り、「医療的ケア児」といってもケア・サポート内容は実に様々です。そのため日本ホームナースセンターでは一人ひとりにあったケア・看護師配置をするため、本人・ご家族・医療機関・学校や行政と何度も打ち合わせを重ね、児童にとってベストな体制が整えられるよう日々取り組んでおります。
今回は学校生活に含まれる「校外学習」について、通常級に通う小学校中学年の女児に実際に行ったサポートについてお話ししたいと思います。
校外学習とは
「平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動を行うこと」と文部科学省では位置づけをしています。
集団行動をするためのマナーやルールを学び、グループ活動を通じて、コミュニケーション能力が鍛えられます。また、宿泊学習や修学旅行では、土地勘のない場所を訪れ、普段の生活圏とは異なる社会や文化を知ることができます。そして、見知らぬ土地で自主的に行動したり、友達と協力する大切さを学ぶ貴重な機会となります。
安心安全な校外学習には、家族だけでなく地域社会とも連携し、継続的な実施のための工夫が必要不可欠となります。
特に医療的ケア児は、バス・電車の長距離移動や日常と環境が変わることで普段以上にストレスがかかり、身体に不調をきたしてしまう場合があります。
そのため行程に基づき訪問する施設や宿泊先へ事前連絡、打ち合わせを行い万が一の時の対応も確認し、全員で共通認識を持つことが大切です。
特別支援学校では、児童・生徒の数に応じて行事ごとに福祉・介護タクシーを手配し、看護師が同乗して移動していくことが多くあります。
しかし特別支援学校ではない通常級では、学校から児童・生徒全員でバスに乗車し移動する場合と、公共交通機関を利用し目的地向かう機会がほとんどとなります。
今回医療的ケア児が宿泊行事に参加する事は区として初めての試みとなり(保護者、看護師も同行)、行政・学校・保護者としても手探り状態からスタートしました。また日本ホームナースセンターとしても日々支援している児童の宿泊行事参加が初めてとなるため、「行政+保護者+日本ホームナースセンター」、「学校+行政+日本ホームナースセンター」の回に分け事前に対面での打ち合わせの機会を設けました。
まず保護者とは今までの宿泊を伴わない校外学習はどのように行ってきたか、宿泊を含む行事への参加についてのご意向や見学施設・宿泊場所の詳細や事前確認事項の要望を伺い、
ヒアリングした内容を基に行政、学校とスケジュールの確認や摺合せを行いました。
移動、見学施設、宿泊施設について
バスに乗車できるかどうかについては児童の成長に合わせて様々な観点からアセスメントしていくことが重要となります。
・乗車/下車時にバス内の通路を通れるか
・児童を抱える場合は何人のサポートがベストか
・長時間の移動時に座位を保つのは可能か
・臥床で乗車した場合も、体勢はきつくないか
等、少し書き出しても確認すべき点は様々です。低学年の時には抱きかかえにて乗車等が出来ていたそうですが、中学年になった児童の成長に合わせてサポート内容を変更するべきとアセスメントいたしました。
また日常的に車椅子やバギーを使用している児童の場合は、積み込む荷物の事前確認等も必要になります。
そこで日本ホームナースセンターでは、先述の児童の成長にあわせ(身長・体重等)今回は福祉・介護タクシーを手配いただけないか看護師長から教育委員会にご提案させていただきました。
乗車/下車時の安全性の懸念だけでなく、サービスエリア等で十分に休憩・介助の時間が取れないこと、吸引が必要となった場合バスを止められないこと(スケジュールにより)等から専用車の準備をいただけないか相談をさせていただきました。
結果、今回は往復ともに介護タクシーを手配いただくことが出来ました。
介護タクシーを手配いただけたことにより、改めて行程を学校、バス会社、介護タクシー会社と摺合せをいたしました。
バス会社に行程のおおよその時間、利用予定のサービスエリアを提出していただき、介護タクシーには他の児童とサービスエリアなどで合流することができるように、また複数回の休憩を挟めるよう行程を作成いただきました。
また、初日に予定されていた博物館訪問をスキップし、早めに宿泊場所に到着するよう行程自体もアレンジいたしました。早めに到着できることにより、児童が休憩時間やトイレ介助の時間が十分に取れることとあわせて保護者に館内を確認いただくためです。
各見学施設には事前に日本ホームナースセンター事務局から、駐車場からの順路、館内を問題なくバギーや車椅子が通れるか、車椅子対応トイレがあるか、付き添い看護師の入館料等を改めて確認いたしました。
宿泊施設には、館内のバリアフリー設備について(HPに記載のない館内図、フロアマップをいただく)、児童専用の個室(今回は母親と同室、ホームナースは別室待機)にシャワー以外の入浴設備があるか、個室から車椅子対応トイレまでの距離・導線、食事が胃瘻注入のためブレンダー使用時の電源使用可否、食事を少し早めに提供いただけるか等確認し、学校、保護者と情報共有しつつ確認を進めていきました。
結果、今回は夜間含め大きなトラブル等なく校外学習は終了されました。
今後の課題について
先述した事例では無事行事が終了し、児童も保護者もとても喜んでいらっしゃいました。
日本ホームナースセンターとして打ち合わせから各連携先への共有等、不備なく対応でき良かったと思う反面、やはり個別性が強く事務局側も改善策や代替案を知識として持っておく必要があると感じました。
学校から電車で向かう校外学習や、今回のように宿泊を伴う宿泊体験学習・修学旅行等、種類は様々ですが、日本ホームナースセンターが支援している児童が体験の機会を失わないよう、引き続き日々最善を模索しながらサポートしていければと思っています。