医療的ケア児に携わる看護師について

日本ホームナースセンターでは、医療的ケア児とそのご家族をさまざまな場面でサポートするため、日々尽力しています。
大変うれしいことに、徐々にご家族や地方自治体のご担当者からのお問い合わせが増えてきました。
しかし、まだまだ医療的ケア児支援法の認知度が低いため、「医療的ケア児に携わる仕事がしたい!」と声を上げる看護師が少ないのが現状です。

今回は、全国の看護師の皆さんに向けて、医療的ケア児に携わる看護師の働く場所や業務内容と役割、病棟看護師との違い、そしてそのやりがいについてご紹介いたします。

■どんな場所でどんな仕事をするの?

他のブログでもご紹介したように、医療的ケアを必要とするお子様・ご家族様が抱えるお悩みやニーズは百人百様あり、比例して看護師が働く場も様々です。
具体的な支援先やそれぞれの業務内容の例として、以下が挙げられます。

【保育園】

・園内ケア:園内で過ごす時間帯における医療的ケア児の健康管理とケアを担当します。
・安全な環境整備:保育士と連携し、医療的ケア児が安心して保育園生活を送れるように環境を整備します。

保育園での看護師の役割は、医療的ケア児の看護もしますが、
ケアが必要でないお子様が体調不調のときの看護や、ケガをした際の手当をすることもあります。時には一緒に遊ぶこともあります。
そのためほかの勤務先と比較すると、体力が必要な場であるのが特徴です。

【特別支援学校】

・学校内ケア:校内で過ごす時間帯における医療的ケア児の健康管理とケアを担当します。
・教育と医療の連携による包括的な支援:特別な医療ニーズを持つお子様のために担任の教師や養護教諭と協力しながら個別教育プランを作成し、教育と医療の両面からの支援を計画します。
・安心・安全な学習環境の整備:教師と協力し安心して学校生活を送れるように、バリアフリーの校舎や教室、特別な設備を整え学習に専念できるようにします。

学校で働く看護師の役割は、保育園と同様に在宅で医療的ケア児に行われている医療ケアを保護者にかわり行います。
学校は学びと成長の場であるため、看護師は医療的ケア児の可能性を引き出し、子どもの成長を楽しめるのが魅力の1つでもあります。

【訪問看護ステーション】

・在宅ケア:医療的ケア児のご自宅へ訪問し、家庭環境でのケアの対応、体調管理、生活上の介護の支援を行います。
・医療機器の使用指導:ご家族が安全に医療機器を使用できるよう指導し、サポートします。
・環境整備と緊急対応:家庭内の環境を整え、緊急時の対応策をご家族と共に考えます。

毎日つきっきりでケアをされているご家族の相談を受けたり、ご家族が介護以外の時間を確保できるようサポートをします。
お子様だけでなく、ご家族とのコミュニケーションもとても重要です。

【放課後等デイサービス】

・施設内ケア:施設に通う医療的ケア児の健康管理とケアを担当します。
・リハビリと療育:リハビリテーションや療育活動のサポートを行い、お子様の発達を支援します。

放課後等デイサービスは、学校がある放課後や学校が休みの日に、6歳〜18歳の児童や生徒を預かる場所です。
看護師の役割は、在宅で医療的ケア児に行われている医療ケアを保護者にかわり行うことや、体調管理、自立への支援です。
年齢層が広いため、より一層一人ひとりの成長に合ったサポートが求められます。

 

他にもまだまだ支援先はありますが、前述のように支援先によって担う業務・役割が少しずつ異なります。
支援を必要とするお子様・ご家族の状況により変動がありますが、ご興味のある支援先がございましたらお気軽にお問い合わせください。

■病棟看護師との違いについて

【環境の違い】
病棟看護師は主に病院内での業務を行いますが、医療的ケア児に携わる看護師は各ご家庭、学校、福祉施設など多様な環境で働きます。
病院で働く看護師の場合、何か困ったことがあればすぐに医師や先輩看護師などに相談できる環境かと思いますが、ご自宅や教育現場での勤務となると看護師1人のみで対応するケースも少なくありません。
1人は不安、、と小児看護や医療的ケア児のサポートをしたい!と思ってもなかなか一歩を踏み出せない、という看護師の声を多々聞きます。

日本ホームナースセンターでは、看護師長が在籍しています。
お子様のお身体状態やケアで何か迷った際はすぐに報告・連絡・相談ができるツールも備えています。
看護師さまに心細い思いをさせないよう、事務局スタッフも一緒にサポートいたします。

【勤務時間の違い】

病棟看護師はシフト制で24時間体制のケアを提供しますが、医療的ケア児に携わる看護師は各ご家庭や学校の生活リズムに合わせたケアを提供します。
基本的には教育の場に合わせた曜日や時間帯の勤務となるため、夜勤がなく、また土日祝日固定休みとなりワークライフバランスがとりやすいお仕事です!

【役割の違い】

病棟では医師や看護師が主体となり、患者さんの回復を目指してケアを提供しますが、医療的ケア児に携わる看護師は、お子様とご家族との長期的な関係構築と、日常生活の中での医療ケアが求められます。
また、教育現場では医療的ケア児とその保護者、教師や養護教諭が主体となり、教育の一環として医療的ケア児の自立を促す取り組みをしています。
そこで働く看護師は縁の下の力持ちとして、子供の成長発達を把握し、限られた医療設備で必要な医療行為やアドバイスを提供し、影で支えていく必要があります。
安全・安楽に努める点では病棟と大きな違いはありませんが、取り巻く環境はそれぞれに違います。そのため、教育現場における看護師は、看護の基本である観察やアセスメント、実施、評価という一連のプロセスを保護者や教職員と連携・協働しながら行うことが求められます。

■実際に医療的ケア児に携わっている看護師の声

こんにちは。私は昨年の10月から医療的ケア児の看護に携わっています。

医療的ケア児とは、日常生活を送る中で人工呼吸や呼吸を楽にするためのたん吸引、チューブから栄養を取る経管栄養などの医療的ケアを必要とする子どもたちのことを指します。
育児経験のある方であればお分かりかと思いますが、障がいのない子供の育児でも、頼る人がいなかったりと様々な場面で苦労した覚えがあるのではないでしょうか?
障がいがある子供の場合、それ以上に大変なのは想像に難くないと思います。
医療的ケアを必要とする子供の場合、保育園などに預けることが難しかったり、スクールバスに乗れず保護者が毎日送迎をしなければならない場合もあります。
もちろん自宅でも継続的なケアが必要です。
自治体によっては多少の補助もあると思いますが、ほとんどの場合それだけでは十分ではありません。
ご家族は就労したくても、時間の調整が難しく、働くことが困難な状況に置かれることが多いです。そんな現状を見て、少しでもお役に立ちたいと考えています。

現在、私は2人のお子様の担当をしています。どちらも先天的な病気を持ったお子様たちです。
1人目は、ご自宅から特別支援学校までの通学に介護タクシーで同行しています。
気管切開をしているため、常にお子様を観察し、吸引が必要な際はドライバーへ安全な場所で停車するよう声をかけ、停車してから実施しています。
冬場は空気の乾燥からか、たんが硬くなってしまった様子でしたので、加湿器を持ち運ぶなどしてその時々に合わせた看護を意識しています。

2人目は、学校が終わってから学童クラブでの生活をサポートしています。
クラブ内でお子様は、おやつを食べたりお友達や施設スタッフさんに声をかけたり、たまにお昼寝をしているのですが、体調の変化にすぐ気付けるよう見守りをしています。
私はこの仕事を始めるまで、小児科での経験もなく、医療的ケアを必要とするお子様と接する機会も全くなくとても不安でした。
しかし、看護師長や事務局の皆さんのサポートがあるおかげで続けることができています。
私にできることは小さなことかもしれませんが、それにより子供たちが普通の生活を送れるよう、子供たちの意思表示やサインを見逃さずに観察し、ご家族の負担が減るようお手伝いしていきたいと思います。
これからも子どもたちとそのご家族を支えるために、精一杯頑張っていきます。

■まとめ

医療的ケア児に携わる看護師の仕事は、さまざまな場所で行われ、幅広い業務内容があります。
病棟看護師とは異なる環境と役割の中で、お子様とそのご家族に寄り添い、深い信頼関係を築きながら支援をしていきます。

医療的ケア児支援の一番の魅力は、お子様の成長発達に深く関わることができる点だと考えています。
日々お子様と接するなかで、お子様がこれまでできなかったことができるようになる瞬間の感動や喜びを体感できたり、
保護者とコミュニケーションを通じて深い信頼関係を築き、安心して生活できる環境を提供していくなかで、家族の一員として信頼され、共に成長を喜び合うことができる等
他では味わえないやりがいを感じながら従事することができます。

現在、支援法の施行がきっかけとなり、以前よりも医療的ケア児への支援の輪は広がっていますが、
今後医療的ケア児はさらに増加する可能性が高く、それに伴い携わる看護師の需要もより高まることが予想されます。
日本ホームナースセンターでは、医療的ケア児支援法の認知度向上とともに、多くの看護師がこの分野で活躍できるようサポートしていきたいと考えています。
一人でも多くの看護師の力が求められているため、少しでも医療的ケア児に携わる仕事に興味がある方は、ぜひ一度お問い合わせください。
一緒にたくさんのお子様とそのご家族を支え、すべての人が安心してその人らしく暮らせる社会を築いていきましょう。

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