お子様に向けた取り組みや目指す未来像について

他のブログにも記載している通り、
日本は医療技術の発達によりこれまでであれば命を落としていた500gで産まれた赤ちゃんをも救うことができるようになった半面、
24時間介護が必要な『医療的ケア児』が、ここ10年で2倍に増えていると言われています。

今回は、日本ホームナースセンターが取り組んでいる医療的ケア児に向けた支援や、目指す未来像についてご紹介いたします。

■医療的ケア児が必要とする医療的ケアとは

そもそも、医療的ケア児が必要とする「医療的ケア」とはなんでしょうか。
具体的な医療的ケアの例として、以下のようなものが挙げられます。

【気管切開の管理】
疾患などが原因で口や鼻がふさがってしまう症状がある場合、のどに穴を開け、カニューレ(通気の管)を通して空気の通り道を確保する処置です。
その他、人工呼吸器を使用する方や、唾液の飲み込み(嚥下)が難しく気管に唾液が流れ込んでしまって(誤嚥)肺炎を繰り返す方などにも行います。
空気の通り道を確保してあげることで呼吸が楽にできるようになったり、気管に溜まった痰を直接取り除きやすくなったりします。

【喀痰吸引】
気道(口鼻~気管までの空気の通り道)に溜まった鼻汁や唾液、痰などを吸引器に繋いだ専用の細いチューブを使用して取り除く処置です。
自分で鼻をかむ・唾を飲み込む・痰を出す、などの行為が難しいお子様に行います。
チューブは口・鼻から、もしくは気管切開を行っている場合は気管切開孔から挿入します。

【経管栄養】
嚥下(飲み込む)機能の障害などにより口から自力で食事を摂取することが難しい場合、
鼻から胃まで専用のチューブを通したり(経鼻胃管)、手術をしてお腹から直接胃に穴をあけてチューブを通したり(胃ろう)し、そこからペースト状にした食べ物や栄養剤、水分を注入する処置のことです。

【酸素療法】
体の中の酸素が足りない時に、酸素濃縮器や酸素ボンベを用いて、カテーテルやマスクを通し て、口鼻や気管切開部から酸素を補います。

【人工呼吸器管理】
自分で呼吸をすることが難しい、または自分の呼吸だけでは不十分な場合に
人工呼吸器という機械を用いて、人工的に息を吸ったり吐いたりと呼吸管理をします。
回路を通じて空気や酸素を口鼻や気管切開部から肺の方に送ります。

この他にも様々な種類のケアがありますが、共通しているのは何らかの医療デバイスによって身体の機能を補っている状態であるということです。

医療的ケア児の多くは、生まれてから数ヶ月から1年ほどでNICUから退院し在宅医療に移行します。
前述に記載のあるような何らかの医療的ケアを必要とするお子様を育児する保護者のほとんどが仕事を辞め、24時間子どもにつきっきりで介護せざるを得ないというケースが非常に多くあります。

東京大学家族看護学分野 上別府研究室が実施した「医療的ケアを要する児童生徒の保護者のレスパイトとQOL(生活の質)に関する調査」によると、9割以上のご家庭で、医療的ケア児の母親が主に介護を担当。
主たる養育者である母親の約7割は就業しておらず、暮らし向きが「大変・やや苦しい」と回答した人は42.0%にまでのぼるそうです。

親が就労できないということは、経済的な困窮につながり、また身体的・精神的な負担の大きさから、両親の離婚など家庭環境が悪化するケースも少なくありません。

■実際の保護者が抱えているお悩み・ニーズ

実際に当センターに寄せられた保護者のお悩みやニーズをご紹介いたします。

・ 吸引が必要で子どもから離れられないので、家事など日常生活にも支障が出る。
昼夜問わず吸引しなければならないのでまとまった睡眠がとれない・出産してから1度もぐっすり眠れた記憶がない。

・子どもが成長し体が大きくなってきて移動や介護の負担も大きくなってきている。
自分自身の体力面の限界も近づいていると感じる。

・医療的ケアが適宜必要なためスクールバスに乗せてもらえないので、
毎日自家用車で送り迎えをしているが、体調の変化がないか気にかけながら運転するのは危険だし大変。
時間にも常に追われている気がして休まらない。

・医療的ケアというハードルがあり、実家にも簡単に預けられず自由に外出したり友人に会ったりすることができない。
1人になる時間もなく、リフレッシュすることが難しい。
精神的に不安定になりモチベーションを保つのに苦労している。

・痰の吸引をいつでもどこでもできる訳ではないので、出かける場所を選ばなければならない。
本人だけでなく、他のきょうだい児も外出しづらく
「いつも後回しにされる」「なかなか構ってもらえず寂しい」とストレスが溜まっている。

・働きたい気持ちがあるのに、毎日学校の送迎があり勤務時間が限られてしまうため、職場に復帰できない。新しい職場も見つからない。
経済的にも精神的にもどんどん行き詰まっていく。

・保育園内やスクールバスにも看護師や医療的ケアのできる先生などが一緒に乗っていただき、保護者がいなくても通園・通学ができるようにしてほしい。

様々な保護者の声を聴かせていただくなかで、抱くお悩みは1つ2つではなく、
日々の生活や介護、移動・外出時、きょうだい間、通園・通学時、経済面、就労面等
様々なシーンで各ご家庭ごとに違うのだと強く感じました。
ただ、保護者の願いは共通して「みんなと同じように学校へ行き、お友達と遊んだり勉強させてあげたい。」ということ。

私たちが支援に加わることで、
保護者に代わって看護師がお子様と一緒に学校へ行き、
学校内でもトイレ介助や食事介助など1日見守りができたらお子様は学校で楽しい時間を過ごせるのではないか、、
保護者はその間つかの間の休息を過ごしたり、好きなお仕事を再開したりと1人の時間を過ごすことによって、ほんの少しでも保護者の負担・将来に対する不安を軽減させられるのではないか、、

日本ホームナースナースセンターは、
「みんなと同じように学校へ行き、お友達と遊んだり勉強させてあげたい。」という保護者の願いを実現し、さらに
看護師が保護者へ医療機器の使い方をアドバイスしたり、お子様の体調面の相談に乗ってあげる等、いつでも相談できる人が身近にいるということがご家族の心の支えにもなると信じ

住んでいる地域に関係なく、医療的ケア児とその家族が適切な支援を受けられる社会を目指していきたいと考えています。

■支援を利用するためにぶつかる壁

2021年に施行された医療的ケア児支援法ですが、最近になりようやく「利用したい!」と声を上げる保護者が増えてきました。
施行された瞬間から申込みが殺到してもおかしくないほど様々なシーンで相当なご苦労をされているはずなのに、なぜ利用希望を出すまでに約3年もかかるのか、、
それは、「各種手続きが大変そう、、」という漠然としたイメージや
「これまで365日ずっと見てきた子どもを急に預けるのは不安、、」という声もありますが
1番の理由は看護師の人材不足にあると言われています。
医療的ケア児支援法を利用するには、保護者が自ら看護師を手配しなければならず、
結果、見つけられず利用したくても利用できないのです。

各都道府県ごとに多少の違いはありますが、利用手続きに関する記事を読むと
「保護者は、対象児童の医療的ケアを実施できる看護師が所属している事業所(訪問看護事業所、放課後等デイサービス等)を探します。」と記載されています。
たとえば、訪問看護事業所のほとんどは朝8:30~9:00始業となり、事業所ごとに朝礼などを実施し前もってご依頼をくださっているご利用者様のご自宅へ訪問していきます。
8:30~9:00とは、ちょうど学校の登校時間でもあり、訪問看護事業所にとって1番忙しい時間帯のため手の空いている看護師がいないという、実態とニーズがそぐわないのです。
そのため、ご自宅近隣の看護師が所属している事業所へ問合せしても断られてしまい、諦めてしまう保護者も少なくありません。

日本ホームナースセンターへ初めて医療的ケア児の相談をしてくださった保護者も、後々聞いてみると、当初は何件も何件も問い合わせたが思うような返事はもらえず、最後の神頼みのようなお気持ちで連絡をくださったと仰せでした。

また、日本ホームナースセンターでも当初看護師の確保に苦戦していました。
当センターの登録看護師の多くが普段は病棟等にお勤めされており、休日にスポットで誰かの役に立ちたい!と登録してくださっています。
ですが、お子様のことを考えるとできるだけ毎日同一の看護師を手配すべきだと考えます。
そのため、お子様のご自宅近隣には毎日の対応が可能な看護師はおらず
今現在、隣の県より片道1時間半かけて毎日支援に通ってくださっている看護師がいるのも事実です。

 

全国にはまだまだたくさんの支援を必要としているお子様がいます。
保育所や学校へ通えなくても、ご自宅で明るく前向きに日々大切に生きる子どもたちとそのご家族がいます。
〇〇へ行きたい!〇〇をやりたい!と内に秘めている想いはたくさんあるはずです。
その、行きたい!やりたい!を1つずつ叶えることでお子様の成長や新たな可能性・ご家族の深い絆に繋がると思います。

日本ホームナースセンターでは、2023年より通学時の支援や学校内の見守り等
医療的ケア児の支援をさせていただいておりますが、
前例に当てはめ対応していくのではなく、お子様・保護者にしっかりと寄り添い、こまかなニーズを把握しお一人おひとりにとって何が本望か、何が最善策かを一緒に模索しながら多種多様な支援・十分なサービスを提供していきたいと考えています。
また、この支援法や看護師不足という実態を全国の看護師にも発信していき、同じ志しを持った仲間を増やし支援の輪をもっともっと広げていきたいです。

障害があってもなくても、医療的ケアが必要でもそうでなくても、
全てのお子様が活き活きと安心して自分らしく過ごせる場所があり、
保護者も笑顔で子育てができる社会を目指し、いまの日本ホームナースセンターができることを常に探究しながら具現化していきたいと考えています。

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