実際に行ったプールの授業でのサポート

他の記事でもご紹介しているように、日本ホームナースセンターは、2023年より医療的ケアを必要とするお子様とそのご家族様の支援を行っています。
私たちは、医療的ケアが必要なお子様が安心して生活できる環境を提供するため、日々努力を重ねています。

医療的ケア児とは、医療的なケアが必要なお子様を指しますが、その実態は非常に多様です。
例えば、重症心身障害児として常時介助が必要な場合もあれば、歩いたり活発に動き回ることが可能なお子様もいます。
医療的ケア児にはさまざまな状況があり、それぞれのニーズに応じた対応が求められます。

一部のお子様は、日常生活の中で継続的な医療的ケアが必要ですが、特定の時間帯や不規則な状況でのみ医療的ケアを必要とするお子様もいます。
例えば、学校生活内の支援では教室内でのケアだけでなく、体育の授業や遠足などのイベントでも特別な配慮が求められます。

通常の学校に通う医療的ケア児のサポート

今回は、特別支援学校ではなく、通常の学校に通うお子様に実際に行ったのサポートの一例についてご紹介いたします。
医療的ケアが必要なお子様が通常の学校に通う場合、学校側と保護者、医療関係者が協力して対応することが重要です。

学校では、医療的ケアの種類や頻度だけに着目せず、医療的ケア児一人ひとりの教育的ニーズに応じた対応が求められます。
これは、彼らが将来の自立や社会参加のために必要な力を培うためのものであり、画一的な対応では不十分です。
その一環として、プールの授業への参加も考えられます。
今回は、お子様が安全かつ快適にプールの授業に参加できるよう、どのように事前準備をし当日を迎えたのか、また新たに上がってきた課題についてご説明します。

事前準備

プールの授業が開始となる約1ヶ月前に、お子様が通う学校関係者より
「去年までは保護者1人で抱きかかえながら入水の介助ができていたが、この1年で背丈が一気に大きくなったため対応方法を変更しなければならない。変更するにあたり、最善策を一緒に検討してほしい」と相談がありました。
すぐに、学校関係者とお子様がお住まいの地域の教育委員会担当者、当センター看護師長、事務局スタッフにて打ち合わせの場を設け、昨年実施した際の日誌を参考に対応方法を協議しました。

具体的な対応策

まず、事の発端となった「入水時に保護者1人での介助は難しい」という点について話し合いが行われました。
看護師が介助にあたるか?という案も出ましたが、看護師はお子様の呼吸状態や顔色に問題がないかを常に確認し、緊急時に備える必要があるため、入水することは難しいと判断されました。
そのため、学校に常駐する支援員をプールの授業時のみ、そのお子様の担当として配置し、保護者と支援員2名体制で介助を行うことに決定しました。

また、実際に話を進めていく中でいくつか課題が浮上しました。
まずは移動方法についてです。
対象のお子様は歩行が困難なため、日常生活は専用のバギーで移動しています。
その学校はプールへ行くまでに十数段の階段があり、もちろんスロープやエスカレーターがなく、前述の通り背丈も大きいため抱っこでの移動は難しい、、と議論を交わし、
最終的にトイレ介助用に導入したリフトで移動することにしました。
他にも、更衣のための広い場所の確保や、入水時に水着のどこを持ち介助するか、
万が一のため救護備品についても話し合い、バッグバルブマスクや看護師がすぐに危険を知らせるための笛、酸素ボンベや保温用タオル、カイロ等を準備し万全の態勢で当日を迎えました。

当日の対応

実際のプールの授業には担当の看護師に加え弊社看護師長も同席し、事前に決定した対応方法で本当に問題がないか、念入りに確認を行いました。
プールの授業は今期計6回予定されていましたが、外気温上昇のため学校側の判断で授業自体が中止になってしまったり体調が思わしくない日もあり、実際に参加できたのは3回となりましたが、すべてトラブルなく無事に終了しました。

しかし、予想していなかったところで新たな課題も見つかりました。
それは、毎週決まった曜日の4時間目にプールの授業が設定されていたのですが、授業後はすぐに給食のため、更衣を急がなければいけないということ。
また、そのお子様はミキサー食となり、毎日看護師が他の生徒より先に給食を取りに行きミキサーにかけ準備をしているのですが、到底、限られた時間のなかで更衣と給食の準備をひとりでは対応できないということです。
今期は、プール授業終了後も保護者や支援員の協力を得て対応しましたが
来年度の時間割を作成する際の課題として学校側にも報告いたしました。

医療的ケア児への支援の未来

冒頭でお伝えしたように、医療的なケアが必要なお子様は百人百様の対応が必要です。
そのため、どの学校にも「対応マニュアル」というものが存在しません。

私たち日本ホームナースセンターは、学校の方針や保護者の想いに寄り添いながらも、お子様一人ひとりの個別性に合わせた対応方法を模索しながら取り組んでいます。
今回のように1人に対して決めた対応方法でも、お子様の成長過程によってその翌年には適応しなくなることも多くあります。
お子様は日々成長し、身体的な変化や新たな興味・関心が生まれるため、支援の内容もそれに応じて進化する必要があります。
そのため、毎年定期的に見直しを行い、最新の情報や技術を取り入れていきたいと考えています。

また、様々な環境で多くのお子様を見てきた看護師がこのような話し合いの場に参加することで、新たな対応方法や最新の設備導入などの気付きのきっかけをつくり、問題解決に貢献することができると考えています。
これまでずっとお子様の近くにいた保護者が「当たり前」に毎日取り組まれていることも、看護師の知識を取り入れることでよりよい方法が見つかるかもしれません。

私たちは、常に最良の方法が見つかる可能性があることを意識し、お子様の成長と共に変わるニーズに応じて、最善のサポートを提供していく所存です。
学校や保護者の皆様と連携しながら、これからもたくさんのお子様が安心して生活できる環境を整えていきたいと考えています。

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