令和3年施行の医療的ケア児支援法によって、医療的ケア児に対する支援が広がっています。
現在、医療的ケア児が20,000人を超え、15年前と比べても2倍に増加している現状で、このような支援法が施行されることは、より良い社会の実現のためにとても重要なことだと思っています。
そこで、改めて医療的ケア児支援法の基本理念を掲載してみたいと思います。
1、医療的ケア児の日常生活・社会生活を社会全体で支援
2、個々の医療的ケア児の状況に応じ、切れ目なく行われる支援
→医療的ケア児が医療的ケア児でない児童等と共に教育を受けられるように最大限に配慮しつつ適切に行われる教育に係る支援等
3、 医療的ケア児でなくなった後にも配慮した支援
4、医療的ケア児と保護者の意思を最大限に尊重した施策
5、居住地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられる施策
すぐに実現が難しくとも、社会全体がこの基本理念を理解し、理想の社会に向けて進んでいけたら素敵なことですよね。
医療的ケア児やご家族を間近でみている私たちとしても、この理念や制度がもっと世の中に広く浸透してくれることを心から願っていますし、その一端を担えるようなサービスとして日々努力を重ねていきたいと考えています。
■ご相談からみえてきた医療的ケア児を取り巻く環境
日本ホームナースセンターでも、法律の施行後から少しずつお問合せをいただいており、ご本人やご家族からお話をお聞きする機会も増えています。
元々当センターでは、ご高齢の方やその家族からのお問合せが多いため、医療的ケア児についての情報はほとんど無いのが実情で、いつもご利用いただいている高齢者のかたのような具体的なサポート内容やその必要性についてしっかりと把握はしていませんでした。
ただ、ご相談をいただくなかで、少しずつ状況を理解することができ、社会全体の課題として私たちなりに少しでもお役に立ちたいと考えるようになりました。
実は、ご相談はご利用される医療的ケア児のご家族からだけではなく、自治体や学校などからも多く頂いております。
それは、試行された支援法をきっかけとして受け入れ態勢を整えようと、社会全体で動きだしたのだと感じました。
【ご相談の内容】
・現行の医療的ケア児の受け入れ態勢だと不安がある
・修学旅行への付き添いは可能か
・登下校のみ看護師の派遣は可能か
・医療的ケア児用に車を手配できないか
・訪問看護ステーション以外のどこに相談すれば良いかわからない などなど。
社会全体として新たな取り組みをしていくにあたって、医療的ケア児やその家族だけでなく、その窓口となる自治体や、受け入れ先である学校、放課後教室なども、どのような体制が適切なのかを考える必要があるなと感じています。
当センターとしては、ご相談のなかで現状のお話を色々とお話を聞かせていただき、医療的ケア児を取り巻く環境について知る良い機会となりました。
また法律の施行を受け、窓口となって体制を整える立場の自治体、支援を受ける家族、実際の支援を行う私たちと、3者ともに手探りで進めていかなければいけない環境はとても難しいものだと感じるとともに、この環境を作っていけることで多くの家族の課題解決につながるのではないかと強く感じています。
■ご家族が抱える課題
そもそも受け入れ態勢以前に、ご家族が抱える課題も多く存在しています。
日本ホームナースセンターでは、初めてサポートさせていただく児童については、なるべく運営スタッフも支援という形で同行し、サポート体制に不備がないかを確認すると同時にご家族ともお話をさせていただいて、安全・安心なサービスだと感じていただけるようにしています。
その現場でご家族からお聞きする課題は様々ですが、サービスを提供する中でその一つでも解消できたらと考えています。
資料:「医療的ケア児とその家族の生活実態調査報告書」(厚生労働省 令和元年度障害者総合福祉推進事業(2020年3月)三菱UFJリサーチ&コンサルティング
参考として、上記は厚労省から出ている実態調査のアンケートですが、とても切実なお悩みや不安だと思います。内容を見てみると心や体への負荷に起因する内容が多くあり、ご家族の負担がみてとれます。
日本ホームナースセンターをご利用いただくことで、心や体の負荷を軽減していただくことが出来ると考えています。
医療的ケア児支援法を使ったご利用も当然ながら、その他の場面でもご利用いただければ幸いです。
サービス自体は保険の対象外、制度外にはなりますので、多くの回数をご利用いただくのは経済的な負担になってしまうと思います。効果的なタイミングを見計らってご利用いただき、ご家族の負担軽減のお手伝いが出来ればうれしく思います。
家族にとって長い時間医療的ケアに向き合っていくことになる中で、「プラスアルファ」のサポートとしてご利用いただきながら、負担軽減の一つとしてご利用いただきたいと思っています。
■基本理念にある「社会で行う支援」
少し話が変わりますが、当社のサービスの中には日本ツアーナースセンターというサービスがあります。
在宅や施設にいらっしゃる高齢者の方が、行きたかった旅行やお墓参り、ちょっとしたお出かけに看護師が付き添い、安全に楽しんでもらうことを目的としているサービスです。
このサービスを提供している中で、国の制度とご利用者の方のご希望のギャップを感じることがあります。
ご存じの通り、お体が不自由になっても、介護保険制度のおかげで、保険適用がされた料金で様々なサービスを受けることができます。これは国の制度として素晴らしい支援だと思います。
ただ、実際にご高齢者の皆さんは、保険適用のサービス以外の「プラスアルファ」を求められていることも事実です。
日本ツアーナースセンターでは、多くのご高齢者とその家族から、旅行や外出についてのご相談をいただいております。意外に思われるかもしれませんが、旅行に行ったり、外に出たいというお気持ちを多くのかたが持っています。
実際に、日本ツアーナースセンターを利用していただくと、行く前と帰ってきたときでは顔つきが変わって、とても明るい表情になっていることが少なくありません。
その表情をみてご家族や施設の方が驚かれる光景を私たちは目にしています。
これは保険適用のサービス以外の、「プラスアルファ」が重要であることを表していると思っています。
一般的に、在宅医療を受けている場合、訪問診療、訪問看護などの保険サービスを利用されていますが、多くの診療所、訪問看護ステーションでは余分な人員がおらず、保険診療内で行われる内容のみが対象となるため、保険適用外のサービスとして外出に付き添ってあげることができません。
そもそも、外出するためには、医師の指示のもとで行い、看護師(介護士)さんの付き添いが必要となりますが、連れて行ってくれる看護師さんが身近な存在として近くにいないのが現状です。
保険適用外サービスとして、日本ツアーナースセンターのようなサービスがあることがまだまだ知られていないことも私たちが向き合わなければいけない大きな課題です。少しずつ認知度をあげていきながら、プラスアルファのサービスとして幅広くご利用いただけるようにしたいと思っています。
国の制度には当然限界がありますので、旅行や外出のサポート費用を社会保障制度の中に含めることは難しいことだと思います。予算の制限があるなかで、なるべく多くの方の支援を行わなければいけないのが国の方針だと思います。
それでも、少しでも生きがいを感じてもらうためには、保険適用内という最低限のものではなく、それ以外のプラスアルファのサポートも必要だと心から感じています。
私たちのような民間の会社が、国が支援していける内容以外のプラスアルファの部分で、ご利用しやすい態勢を整えることで、「社会で行う支援」の一部として、お役に立てればと考えています。
■医療的ケア児のサポートについて
ひとつのお問合せをきっかけに知ることとなった医療的ケア児についてですが、私たちとしては力をいれて取り組んでいければと考えています。
今までご高齢者のかたとその家族のサポートで得た知識や経験、ノウハウを生かし、国の支援では届かないプラスアルファのサポートをご提供することがご本人やご家族にとって大切な役割になるのではないかと考えています。
また社会全体の取り組みとして、私たちもその一端を担いながら、切れ目のない支援を行っていきたいと思っています。
都心部では活発な受け入れがあっても、地方ではまだ進みが遅いようにも感じています。
日本ホームナースセンターでは、北海道から沖縄まで全国で対応できるよう、準備を進めているところです。
当社の企業理念の中に、「医療と介護に携わる人と企業を支援し、社会に貢献する。」というものがあります。まさに、医療的ケア児のサポートを通じてこの理念を体現できればと考えています。